平等とは何でしょう?私の就活体験談+私の職場紹介シリーズVol. 4
みなさんこんにちは。入庁2年目職員のMです。
現在、「県税事務所」というところで、長野県税の徴収業務に携わっています。
今回は、「採用面接でどうしてそんなこときくの?」というような質問が、後に繋がる貴重な瞬間となった私の経験をお話しし、公務員にとって大切な「平等」をテーマに長野県職員の仕事を紹介したいと思います。
平等とは何か
「平等とは何でしょうか。」
私が学生時代に就職活動をしていた時、ある省庁の面接で尋ねられた質問です。みなさんならどう答えますか?
「自由・平等・博愛」、「法の下の平等」、「ジェンダー平等」など、様々な場面で目にする言葉ですが、いったい何を意味するのでしょうか。面接官は何をききたかったのでしょうか。
当時の私はうまく考えがまとまらず、苦し紛れに「機会の均等」について語ったのを覚えています。
また別の機会には、「住民との距離が遠い分、倫理観が求められる」という話もありました。住民(国民)との直接的な関わりが薄いからといって、倫理性を欠く仕事はしてはならないということです。一般的には市町村に近づくほど住民との距離は近くなりますが、倫理的で平等な仕事が求められるという点は、国、都道府県、市町村の別を問いません。
私は結果的に、住民との距離がより近く、かつ広域の仕事ができる県職員を選択しました。
自分がどんな距離感で公務をしたいか。そんなことも考えてみるといいかもしれませんね。
さて、これから県税事務所の仕事を紹介しますが、平等とは何かを考えながら読んでみてください!
県税事務所の仕事
私が現在所属している県税事務所は、「収税」、つまり、県の税金を集める徴収業務を主に行っています。この記事では、数ある税金の中でも業務の中心となる自動車税(種別割)を例にとってお話します(税金の種類や課税業務については、4月の記事でご紹介します)。
滞納整理
自動車税(種別割)は、毎年4月1日現在の登録自動車の所有者に対して課税され、納期限を5月末に迎えます。理想は100%の人が納期限までに納付することですが、納期内に納付されるのは約80%というのが現状であり、残りの20%の人たち(滞納者)に対しては、何らかの働きかけ(滞納整理)が必要になります。その中でも、みなさんも一度は聞いたことがあると思いますが、「督促状」というものが収税の仕事の分岐点となります。長野県税を含む地方税の賦課徴収手続き等を定める地方税法にはこんな規定があります。
少し難しい言葉も出てきますが、督促状が送られてから10日経ってもなお自動車税(種別割)を納めていない人に対しては、県税事務所の職員(徴税吏員)が財産(銀行の預金や給与等)を差し押さえ、納められるべき税金(徴収金)を確保しなければいけないということです。
具体的にどんなことをするかというと、金融機関や滞納者の勤務先、市町村役場等の協力を得て、預金や給与の支給状況を調査し、その財産を強制的に税金に換価します(滞納処分)。時には滞納者の自宅を早朝から訪問し、家屋内の捜索を行うこともあります(国税徴収法第142条参照)。
滞納整理は、我々徴税吏員がただ税金を集めるために行うものではなく、厳格に定められたルールに基づき実施します。
つまり、法が税の滞納を許さないのです。
もちろん、滞納者の状況に応じて納税を猶予する制度等もあり、差押えによる滞納整理がすべてではありませんが、徴収という仕事は、納期内納税者との公平性を保つため、言い換えれば「平等」を実現するために行われています。その結果、年末には収入歩合(確定した税金に対して納付された割合)は99%を超えます。
法の下、徴税吏員が自らの手によって徴収金の20%を確保していると考えると、なかなか刺激的で責任重大な仕事だと思いませんか?
平等を実現する手段
それでは、納期内納税者と滞納者との間の不公平を是正し、収入歩合を100%にすれば平等は実現できるのでしょうか。ここでは、徴収という仕事の他に、平等な社会を実現するために私が重要であると考える制度や取組を二つ紹介します。
一つ目は、自動車税の減免制度です。これは、一定の要件の下で、障害者手帳をもつ人の自動車税を減税したり免除したりするものであり、障がいによって生きづらさを感じてきた当事者の声に応え、その自立や社会参加に向けた取組の一つです。
もう一つは、外国人への対応です。外国籍であっても、日本国内に住所を定め自動車を登録すれば、日本人と同じように自動車税の納税義務が生じます。そのため、同じように納税通知を送り、滞納となれば同じように差押え等の滞納処分を行います。しかし、日本語がわからない人もいる中で、「同じように」対応してよいのでしょうか。納税通知、督促状、催告書を送って納税を「伝え」ても、必ずしも「伝わる」とは限りません。そのため、伝わっていない可能性も考慮して文書を英語で作成したり、時には直接英語で折衝をすることが必要な場合もあったりします。長野県には白馬村や軽井沢町等、世界的に人気のある地域も多いため、納税義務のある外国人にも「同じように」納税をしてもらえるよう、県税事務所が努力することが求められるのではないかと考えながら、日々業務に励んでいます。
おわりに ~面接官の質問が今に生きる~
この記事では、私が就職活動の中で出会った「平等とは何か」という問いをテーマに、県税事務所の仕事についてご紹介しました。実際に公務員となった今、この「平等とは何か」という問いに私はこう答えるでしょう。
「誰一人取り残さないこと」
これは国連の持続可能な開発目標(SDGs)の基本理念でもありますが、学生時代の私には理念に対する理解はあっても実体験が足りず、就職面接では冒頭のような返答をしたのだと思います。
徴税吏員は、滞納者も障がい者も外国人も、それぞれの状況に応じた対応をし、税の平等を実現する努力をしています。それが私たちの使命であり、やりがいです。「平等とは何か」といううまく答えられない問いに対して、その答えを探しながら今の仕事に取り組んできました。税の観点から一つの答えを導き出せたことは、長野県職員ひいては公務員として働いてきたことの成果であると感じています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!