俺たち、日々是波乱万丈の廃棄物監視員~ホンネで語る県職員の仕事について~
イントロダクション
こんにちは、廃棄物Gメンの∞(インフィニティー)です。
皆さんは県職員の仕事についてどんなイメージをお持ちでしょうか?
企画、財政、地域振興、観光誘客や産業振興、企業誘致、未来のまちづくり、教育・文化・芸術振興、人事・職員採用、国際交流など、そのような仕事を第一に思い浮かべるかもしれません。
しかし、そういった「華やかな仕事」ばかりが県職員の仕事ではありません。
県職員の仕事の中には、「とっても大切で絶対に必要な仕事だよね~」と職員がみんなフツーに言うけれど、職員自らが手を挙げてまで進んでやりたいとは、残念ながら「思わない」「思われない」仕事っていうのがあります。
つまり、「できれば自分はやりたくないなぁ、異動先になったら大変だなぁ~」、悲しいですが、そんなふうに言われてしまう仕事(業務)があります。
※いやいや誤解のないように、私(筆者)はこの仕事に誇りをもっていますし、自ら志願して配属されています。(苦笑) また、どんな仕事場(業務)にもヤル気にあふれた志高き職員がもちろんたくさん在籍していますので(強調)・・・
そういう仕事の一つとして挙げられてしまうのが“廃棄物関係”の仕事、いわばゴミのお仕事です。
普段は、あまり注目もされずに、いわゆる“静脈産業”の中で、表立って光を当てられることは少ないけれど、陰ながら、住民のみなさんの良好かつ清潔な生活環境を支える縁の下の力持ち的な存在。どうしても注目を浴びるようなキラキラした花形部署の陰に隠れてしまいがちですが、とてもとても大事な仕事です。
また、廃棄物は人間が生活していくうえで必ず排出されるものであり、我々の日常生活の中で決して避けることができない、常に向き合わなければならないもの、それが廃棄物、ゴミの問題です。
例えば、街中のあちらこちらでゴミの不法投棄を許すことがあったり、ゴミが適正処理されないと、景観が損なわれたり、悪臭を放ったままになったりと、環境汚染や不衛生による健康被害に繋がりかねません。
読者の皆さんの中で、「ゴミを道端にポイ捨てする」これって重い犯罪なんだと認識している方は、どのくらいいるでしょうか? あまたの犯罪の中でも、人を直接傷つけることなく、コンビニ感覚でおこなわれてしまいがちな行為、それがゴミの不法投棄ですが、「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金又はこの併科」が科されてしまうれっきとした重い犯罪です。
なお、法人(企業)が不法投棄をしてしまうと、「3億円以下の罰金」になってしまいます!
「自分の目の前から早くなくなればいいもの」、それが「廃棄物」「ゴミ」の本質的なところです。故に、悲しいかな「できればお金なんかをかけずに不適正に処理しちゃおう」、「その辺に不法投棄しちゃおう」、「山の中や人気(ひとけ)のない場所に持って行って埋めちゃおう」という考えの人も出てきてしまいます。
それを如何に未然に防ぎ、ルールに従って適正に処理させるか、その“最後の砦”になるのが、我々廃棄物対策の部署に身を置く者の使命であります。
そんな廃棄物対策の仕事、とりわけ産業廃棄物(産廃)の監視指導業務を日夜行っている我々廃棄物監視員の業務について、これから長野県の未来を担う県職員志望の皆さんに少しでも伝わり、県職員の縁の下の力持ち的な日陰の分野の仕事についても一度考えてもらえればと思い、紹介させていただきます。
私は何者?
まず、私の自己紹介ですが、第二次ベビーブームど真ん中、就職氷河期世代、ロスジェネ世代のアラフィフ職員です。18歳人口ピークの翌年の大学受験(浪人当たり前)で苦労し、就職活動でも就職氷河期と重なり、またもや苦労した社会の厳しさを十分体感している世代です。この世代は、世の中的には“人”が多い世代のはずですが、長野オリンピック終了後、長野県においては、数年間、職員の採用抑制をしていたため、この世代の県職員は、当時そう多くは在籍していませんでした・・・
(自分が採用された20年以上前に比べ、今はこのところの社会人採用枠で、中途採用されている就職氷河期世代職員も増えてきているのかもしれませんが)
廃棄物監視指導の仕事って何してるの?
我々、廃棄物監視指導担当は、「資源循環推進課」という環境部の一つの課に所属しています。ちなみに「係」ではなく「担当」と独特な名称が付けられています。
もともとは、廃棄物監視指導課という独立した部署でありましたが、「廃棄物であっても再利用や再資源化により循環型社会への移行を目指すという時代の流れ」とともに、廃棄物政策と廃棄物処理業の許認可事務を担当している廃棄物対策課と一緒になって「資源循環推進課」に生まれ変わりました。
また、特に、廃棄物監視指導担当の面白いところ、ユニークなところですが、通常、県の組織は、課長補佐、係長を筆頭に指揮命令系統が上から下へと向かう「ライン制」の係を取っている部署がほとんどですが、監視指導担当は県の組織でも珍しい「スタッフ制」という形を取った布陣を組んでいるところです。
したがって、不法投棄の通報や問題事案の発生があれば、日常的にみんなで考えて議論が容易にできる環境にあります。一人だけで難しい事案を悩み抱えることなく、複数人(チーム)で事案、問題を共有し、解決策を考え導き出していきます。そんなチームで仕事をする重要性、面白さを学べるところが、廃棄物監視指導担当の最大の特徴かもしれません。
なお余談ですが、現地機関も含め、監視指導担当に配属される職員の特性として、自分の考えをしっかりと持った個性的な職員の宝庫であり、日々異彩を放ちながら、喧々諤々(けんけんがくがく)議論を交わし仕事に邁進しています。
我々の実際の業務内容については、多種多様な仕事が盛りだくさんではありますが、なんと言っても、我々の一番の仕事は「立入検査」です。廃棄物処理業者への立入検査の他、不法投棄通報があれば、投棄現場に臨場し、状況を確認し、行為者や関係者に話を聞く、そして適切な指導を行う。
それが我々「廃棄物監視員の仕事の中心、一丁目一番地」になります。
なお、基本的には、現地機関である地域振興局の環境・廃棄物対策課(佐久、上伊那、松本、長野)の職員が主体的に現場業務を行っていますので、県庁に籍を置く廃棄物監視指導担当は、地域振興局と日々連携しながら後方支援をしている位置付けになります。
※本庁(県庁にいる職員)自ら、主体的に動かなきゃならない懸案事項も抱えていますが・・・
そうそう“現場へ臨場する”とは、どこか警察の仕事に似ていますよね。
そうなんです、我が監視指導担当には長野県警察からの現役バリバリの警察官幹部(警視・警部・警部補)が出向者として3名も在籍しています。というのも、廃棄物の不法投棄(不適切処理)や野外焼却が一旦発生すると、行政からの指導に留まらず、事件に発展する可能性を孕んでいる事案も多々ありますので、行政(県)と警察との強固な連携が求められる部署でもあるからです。また、それだけではなく、行政だけでは対応に窮するような「難しい方」とも、時として“対峙”しなければなりませんので、現役の警察官がいつも一緒にいることは心強いところでもあります。
なお、ここまでお読みになられた方で、「県職員に採用されるといきなり、こんな仕事をするのかぁ~」と心配、不安になられる方もいるかと思いますが、基本的には行政職の若手職員(20代~30代半ば)が配属されることはなく、ある程度経験を積んだ中堅職員以上が配属されますので、どうぞご安心を・・・(苦笑)
また、監視指導の業務ばかりではなく、時には体を張った廃棄物の一時的な保全措置、環境整備(ゴミ拾い、ゴミ片付け)等の作業も行っています。
また、廃棄物の不法投棄場所は、山林の中や河川脇、藪の中、崖下など、人気が無く日常生活でふつう足を運ぶことがないような場所 がほとんどなので、どのような現場にも行ける健康で丈夫な体が資本です(笑)
その他の業務
この他の業務についても、一部ご紹介したいと思います。
車両点検
長野県内全域において、警察と連携し、抜き打ちで廃棄物車両の点検を実施しています。
仕事内容は、産廃運搬車両を停車させ、書類(契約書の写し、マニフェスト(廃棄物を運ぶ時に必ず一緒に持ち運ぶ書類のこと))の持参、積載された運搬物の内容を確認します。警察官もいることから、現場はピリッとした緊張感が流れています。ドライバーの皆さんも運送中に急に止められるわけですから、こちらも丁寧かつ速やかな質問を心がけています。この車両点検は、取り締まって罰を与えることが目的ではなく、不備事項があれば、しっかり正してもらい適性処理を進めてもらうことが、この点検の最大のねらいです。
不法投棄(夜間)パトロール
毎月、資源循環推進課、現地機関(地域振興局 環境・廃棄物対策課)とも、夜間を中心に不法投棄パトロールを行っています。
不法投棄の頻発箇所を中心に、処理業者等への立入など、定期的に監視活動を行っています。
臭気測定
堆肥化施設の臭気測定をやっています。これは堆肥化施設から採取してきた“におい”を希釈して(薄めて)、3つのにおい袋に入れ、そのうち一つ“臭気が確認できるもの”を選ぶものです。パネルという一定の資格を持った職員が行うのですが、鼻の利きが試されます(笑)このような検査を通じ、臭気対策がしっかりと講じられているか確認するため、定期的に臭気測定を行っています。
以上、業務のほんのごく一部を紹介しましたが、基本的には、我々廃棄物監視員は「現場第一」「立入第一」主義の仕事であることには変わりがありません。
それに「様々な考えを持った人と会って、法律に基づいて伝えなければならないことをしっかり伝える(指導する)」なんと言っても、この「対人折衝」がしっかりとできないと、この業務は務まりません。
どんなにAIが進化していっても、人間がサイボーグやロボットになり得ない限り、多種多様な考えを持った生身の人間を相手にする業務は、合理化されることなく永遠に続きます。
また、人間の経済活動がある限り、廃棄物(ゴミ)は絶対になくなりません。だからこそ良好な生活環境を保つべく、最後の砦となる「廃棄物の監視指導」が必要となります。
我々廃棄物監視員は、人間が生来持っている「性悪な部分(人が見ていなければゴミなんか適当に処分しちゃおう、不法投棄しちゃおう)」と向き合いながら、今日もまた新たに生まれる廃棄物(ゴミ)という我々の生活において切っても切れない切実な問題に真正面から向き合っています。
最後に
ここまで読んでいただいて、皆さんはどのような感想を抱かれたでしょうか?県職員のイメージがガラッと変わったでしょうか?思ったよりもけっこうガテン系な仕事もあるな~とか・・・、
いろいろ特殊任務を抱えた仕事があるんだな~、とか(苦笑) ただ一日中、県庁の建物の中に居て、パソコンと向き合っているだけが公務員の仕事じゃないんだな~ってことが、少しでもわかっていただけたら幸いです。
県職員には異動がつきものです。特に行政職は仕事内容が多岐に渡っており、必ずしも、自分の希望どおりにならないことが多々あります。
それでも、短期間のうちに、集中的に勉強してその道のプロにならなければなりません。そして、どんな仕事でも“やりがい”を見出して、懸命に職務に専念していかなければなりません。それが、格好つけていうと 「県職員に課された使命」なのです。
県職員になることはあくまで通過点であり、問題は、県職員として採用されてからです。「私はこんな仕事をするために県職員になったわけではない、、、」と悩むことがあるかもしれません。
そんなことにならないためにも、これから県職員を目指される方は、「なんでもやってやるぞ!どんな仕事もどんと来い!」との気構えでいてほしいですね。そうすれば県職員としてやっていくうえで、怖いことなど何もありません。
採用試験合格に向けて、悔いが残らないよう試験勉強前向きにがんばってください! みなさんが晴れて長野県職員に採用されることを心から祈っています!